ワクチンを「作る」ための基金だった — 開示された管理運営要領の全文と、そこに書かれていないこと
この記事は何のために書くのか — 判決の前に、記録を残しておきます
私は、青森市を相手に住民訴訟を起こしています。
事件番号 令和7年(行ウ)第3号 住民訴訟事件。青森地方裁判所 第2民事部 合議係。原告 葛西護、被告 青森市外1名。
第1回口頭弁論は、令和8年5月15日(金)午後1時30分に開かれました。
そして、それが最初で最後でした。
主張の中身が法廷で議論されたことは、一度もありません。私はこの訴訟に勝つつもりがありません(理由は「私の考え」に書きました)。目的は、青森市民と日本国民に知ってもらうことです。訴訟は、そのための手段でした。
なぜ訴訟が手段になるのか。訴えないと、文書が出てこないからです。
そして——その通りのことが起きました。ただし、間に合いませんでした。
私が読みたかった文書は、弁論の50日後に届きました
時系列で書きます。
日付 | 出来事 |
令和7年2月26日 | 青森市へ「生産体制等緊急整備基金の収支が分かる文書」を開示請求(のちの乙第4号証) |
令和7年10月10日 | 青森市監査委員へ住民監査請求を提出 |
令和7年10月31日 | 監査委員が却下(青市監第69号)。提出から16日 |
令和7年11月19日・21日/12月10日 | 厚生労働大臣へ、基金の交付金通知・管理運営要領・感発0516各号の開示請求(e-Gov) |
令和7年12月11日 | 開第1631号:全部開示の決定(要領) |
令和8年2月26日 | 青森地裁から期日呼出状。第1回口頭弁論を5月15日に指定 |
令和8年3月26日 | 厚労省が7件の決定通知書を送付。実施方法等申出書の提出を依頼 |
令和8年4月10日 | 被告青森市が答弁書を提出。ここで初めて振込額決定通知書(乙11)が出てくる |
令和8年5月15日 | 第1回口頭弁論 |
令和8年7月4日 | 私が e-Gov から要領の全12ページを取得。弁論の50日後 |
決定が出たのは令和7年12月11日です。手元に届いたのは令和8年7月4日です。 その間、約7か月。「開示する」と決まった文書が、交付されないまま止まっていました。
そして、その7か月のあいだに、この訴訟は終わっていました。
何が起きたのか
私は、監査請求の段階で「青森市が基金409,779千円を接種事業に流用した」と主張しました。この金額は間違いでした。
正しい数字を知る方法が、当時の私にはありませんでした。青森市の補正予算書には「409,779千円」と印字されている。それが公開されている唯一の数字でした。実際に交付されたのが159,700,300円だと分かったのは、令和8年4月10日——被告が答弁書と一緒に振込額決定通知書を出してきたからです。私が訴えた、あとです。
訴えなければ、私は今も間違えたままでした。
そして、この記事の中心にある管理運営要領。インターネット上のどこにも公開されていません。 国会で議員がこの基金を追及したときも、要領の文面そのものは示されていません。私がこれを読めたのは、開示請求をして、200円払って、7か月待ったからです。
だから、判決の前に、いま分かっていることを書きます
この記事でやることは、3つです。
- 開示された要領の全文を示す——国会でも示されなかった一枚を、そのまま出します。黒塗りはありません。
- 何が分かって、何が分かっていないかを、分けて書く——私が間違えたところも、そのまま書きます。訂正が4つあります。
- これからの戦略を書く——次にどの文書を請求するか。9本あります。
そして、判決が出たら、もう一本書きます。
判決文と、私がここに書いた調査結果を突き合わせて、何が違ったのかを記事にします。 裁判所が何を判断し、何を判断しなかったのか。私の見立てのどこが当たり、どこが外れたのか。それは、判決が出てからでないと書けません。
この記事は、その前半です。
お急ぎの方へ。 全体で約4万字あります。上の「目次」から、関心のあるところへ飛べます。各章の終わりにも目次を置いてあります。 最初に読むなら——要領に何が書いてあるか(証拠画像つき)、なぜ雑入だったのか(予防接種法を読んで分かったこと)、14年前、厚労省は同じ事業をどうやっていたか の3つです。
要旨
令和2年6月29日、厚生労働省健康局長は、一般社団法人新薬・未承認薬等研究開発支援センター(以下「PDSC」)宛てに、健発0629第26号「ワクチン生産体制等緊急整備基金事業等の実施について」を発出しました。別添が「ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領」です。この基金には、その後の補正予算で合計およそ1兆6,590億円が措置されました。
私はこの要領の全ページの開示を請求し、全部開示の決定を受けて、令和8年7月4日に交付を受けました。黒塗りは一箇所もありません。
要領には、こう書かれています。
- 事業の実施主体は、基金管理団体と「事業実施団体」。事業実施団体とは「ワクチン生産体制等緊急整事業を行う民間団体」である〔原文ママ。「整備」の「備」が欠落している〕。
- 対象経費の柱は、実生産施設の新設・増設・改修、設備、技術移管、実生産方法の検討。「施設・設備の維持等に係る費用、消耗品費、原材料費及び人件費は対象経費とならない」(ただし末尾に、大臣が認めた事業を対象にできる受け皿の条項がある。後述§1-2で正直に書きます)。
- 「基金事業及び特別対策事業の実施期限は、令和4年度末までとし、その時点で基金を解散することとする」(精算目的で令和5年12月末まで延長可)。
- 解散するときの残余額は国庫に返還しなければならない。
- 基金は「特別対策事業を実施する場合を除き、これを取り崩してはならない」。
- 助成を受けた民間団体は、「少なくとも令和11年度末までの間」、必要なワクチンを製造できる体制を確保しなければならない。その維持費は、上のとおり基金の対象外です。つまり「公費で建てて、あとは自前で10年維持せよ」という設計です。
要領の全12ページのどこにも、「市町村」「地方公共団体」「接種」という語は現れません。
(ただし、この要領には私の見立てに不利な条項もあります。それは §1-2 で、私自身の手で挙げます。伏せて書けば、あとで必ず突かれるからです。)
ところが令和6年度、この基金から、全国の市町村へ、新型コロナワクチンの定期接種1回あたり8,300円の助成金が支払われました。青森市もその一つで、実績19,241人分・159,700,300円を受け取っています。根拠は令和6年5月16日付の一枚の部長通知(感発0516第152号)です。そして厚生労働省は、この資金の流れを自ら公開資料にフロー図で描いています——「ワクチン生産体制等緊急整備基金」という箱から、市町村へ矢印が伸びている図を。
つまり、この資金の流れは隠されていません。厚生労働省が自分で図にして、自治体に配っています。
ただし、「隠されていない」ことと「支出してよい」ことは、別の話です。
公金の支出には、根拠が要ります。 要領は、この基金を何に使えるかを定めた、その根拠文書です。そこに書かれていない使途は、書き忘れではありません。根拠が示されていない、ということです。
そして、この基金の名前を、もう一度見てください。
ワクチン生産体制等「緊急整備」基金。
なぜ「基金」という形が許されるのか。 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令 第4条第2項が、条件を書いています。
複数年度にわたる事務又は事業であつて、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり…
単年度予算の例外が許されるのは、緊急で、額が読めないからです。それが基金という器の存在理由です。
では、令和6年度は、緊急だったのでしょうか。
厚生労働省が、自分で答えを書いています。
令和6年度以降、新型コロナウイルス感染症の「まん延予防上緊急の必要がある」と認められる状況にはないと考えられるため、特例臨時接種を令和5年度末で終了することとする。
— 事務連絡「令和6年度以降の新型コロナワクチンの接種について」令和5年11月22日・厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課
「緊急の必要があると認められる状況にはない」。 厚生労働省が、そう認定しました。
その4か月後、「緊急整備」を名に冠する基金から、全国の市町村へ、接種1回8,300円が流れています。
詳しくは§11に書きました。要点だけ先に記します。
- 令和5年5月8日、新型コロナは5類へ移行。政府対策本部は廃止されました。
- 令和5年11月22日、厚生労働省が上の事務連絡を発出。
- 令和6年4月1日、新型コロナは予防接種法2条3項3号のB類疾病になりました。2号(新型インフルエンザ等感染症…)ではありません。3号の同居相手は「高齢者の肺炎球菌感染症」です。条文の上で、新型コロナは肺炎球菌と同じ箱に入りました。勧奨も努力義務もかかりません(同法8条1項・9条1項)。
- 令和6年3月8日、青森市議会は、市民が出した予防接種健康被害救済制度の申請費用の助成を求める請願を、10分の審査で不採択にしました。保健部長は「創設することは考えておりません」と答えています。
- 令和6年5月31日、青森市は議案第1号「令和6年度青森市一般会計補正予算(第1号)」を提案。歳入に「新型コロナワクチン接種助成金 409,779千円」を計上し、6月定例会で議決されました。接種が始まる4か月前です。
- 令和6年度、その「緊急整備」基金から、8,300円が支払われました。
議会が予算として議決できたということは、額が見込めていた、ということです。 政令が基金に求める「各年度の所要額をあらかじめ見込み難く」とは、正反対のことが起きています。
私が言えるのは、ここまでです。
令和2年6月29日に定められたこの要領は、基金を接種への助成に使うことを、認めていません。 実施主体は民間団体に限られ、対象経費は生産施設と設備であり、期限は令和4年度末で、そこで解散して残りは国庫に返す、と書いてある。市町村も接種も出てこない。それは、読めば分かることです。
そして、「緊急」という前提は、国自身が令和5年11月22日に手放しています。
では、なぜ「違法だ」と書かないのか。
確かめられていないことが、一つあるからです。この要領が、令和6年度にも生きていたのか。
基金は令和4年度末に解散していません。どこかで期限が延ばされている。延ばされているなら、要領は改正されているはずです。その改正後の要領に何が書いてあるのかを、私は知りません。
改正されていれば、「手続きは踏まれていた」で終わります。私はそう書きます。
しかし——要領を書き換えても、消えない問いが二つ残ります。
一つ。「緊急の必要はない」と国が認定した後に、「緊急整備」基金から支出することは、何によって正当化されるのか。
二つ。施行令第4条第2項は政令です。要領をどう書き換えても、政令の要件は動きません。見込数を9月13日までに報告させ、その4分の1を10月に前払いし、実績で精算する——その事業は「各年度の所要額をあらかじめ見込み難く」に当たるのでしょうか。
一方で、令和3年度にこの基金から支出された7,351億円のうち、6,626億円はファイザー・モデルナ・武田からワクチンそのものを買うために使われ、国内生産のために使われたのは725億円でした。参議院で議員がこれを「名前に偽りあり」と指摘しています。
国会では令和7年2月、この基金の目的外使用が正面から問われました。財務大臣は「事実関係を確認させていただきたい」と答弁しました。その確認結果が公表されたことを、私は確認できていません。
そして——国会で論戦している当事者も、この要領の文面そのものを示していません。私が探した限り、要領本体はインターネット上のどこにも公開されていません。
だから私は、それを出します。以下、要領に何が書かれ、実際に何が行われたかを、並べて記録します。
経緯(時系列)
【要領ができるまで】
- 令和2年6月12日〜6月29日 基金管理団体の公募。〔mhlw-vaccine-2025/disclosed-kikin 本文が参照する「基金管理団体公募要領」〕
- 令和2年6月29日 健発0629第26号(厚生労働省健康局長 → PDSC 専務理事)発出。別添「ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領」を定める。=公募の最終日。〔mhlw-vaccine-2025/disclosed-kikin〕
- 令和2年6月29日 厚生労働事務次官通知「令和2年度新型コロナウイルスワクチン等生産体制整備臨時特例交付金交付要綱」。〔要領 第6(2)が参照。本体は筆者未入手〕
- 令和2年8月6日 PDSC が基金管理団体に採択(7月14日付)。〔PDSC 公表〕
- 令和2年8月7日 第1次公募 採択(アストラゼネカ、アンジェス、KMバイオロジクス、塩野義、武田、第一三共)。〔厚労省 公表〕
【使途が広がっていく】
- 令和2年12月 「ワクチン生産体制等緊急整備事業(非公募型)実施要領」。目的に「ワクチンの確保及び供給の準備」を掲げ、「国内の生産体制の整備費用は必要でないもの」を明示的に対象とする。
- 令和3年度 基金からの支出 7,351億4,300万円。うちワクチン購入 6,626億2,800万円/国内生産 725億1,500万円。
- 令和3年8月17日 第2次公募 採択(大規模臨床試験等の支援)。
- 令和4年12月 第3次・第4次公募 採択(部素材の品質評価 等)。
- 令和5年3月 会計検査院 随時報告。「4年3月末までにワクチンの確保に係る費用として基金管理団体からワクチン製造販売業者に対して交付された助成金の額は、合計で1兆4578億1837万余円」。
【要領が定めた期限を越える】
- 令和4年度末 要領 第2(9)① が定める基金の解散期限。基金は解散していない。
- 令和5年度 基金から約1,008億円が国庫返納。
- 令和6年4月22日 行政改革推進会議「基金全体の点検・見直し結果」。本基金の予算措置は「R2補正② 1,377億円/R2補正③ 1,200億円/R3補正① 9,263億円/R4補正② 4,750億円」=計およそ1兆6,590億円。分類は「今後、予算要求が見込まれないもの」。
【基金の金が市町村へ】
- 令和6年3月15日 第34回 自治体向け説明会。8,300円助成のスキーム図が示される。
- 令和6年5月16日 感発0516第152号(厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長 → 都道府県等)「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成について」。実施要領を示す。〔筆者は本体未入手。内容は下記の厚労省公表資料による〕
- 令和6年6月21日/9月24日 予防接種自治体説明会。実施要領の概要とフロー図が公表される。
- 令和6年9月13日まで 各市町村が見込接種者数を報告。青森市は49,371人と報告。
- 令和6年10月1日〜令和7年3月31日 定期接種の対象期間。
- 令和6年10月 1回目送金(見込額の1/4)。青森市 102,444,825円。
- 令和7年8月 2回目送金(実績精算)。青森市 57,255,475円。合計159,700,300円(実績19,241人×8,300円)。
【国会で問われる】
- 令和5年6月1日 参議院厚生労働委員会。高木真理議員が「名前に偽りあり」と指摘。
- 令和6年12月19日/令和7年2月27日 参院財政金融委・衆院予算委第五分科会。財務省が「目的外使用には当たらない」との見解を示す。
- 令和7年2月13日 衆院。重徳和彦議員「1,800億円基金が積まれておりますが、1月下旬の時点で700億円足らずぐらいしか使われていない」。
- 令和7年2月17日 衆院予算委。石破首相、基金の運用損19億円・信託報酬3億円に言及。加藤財務大臣、基金は「令和8年度末を期限とした基金」と明言。
- 令和7年2月28日 衆議院財務金融委員会。川内博史議員が「等」の位置を指摘。原口一博議員が「接種という言葉はないんですよ、それから地方という言葉もないんです」と指摘。仁木博文厚労副大臣が「国民の保健衛生の向上に寄与する」と答弁。加藤財務大臣「事実関係を確認させていただきたい」。
- 令和7年3月4日 衆院予算委。大西健介議員「ワクチン生産体制等緊急整備基金から447億円を使うことになっている」=予算修正の財源に。
- 令和7年4月 厚労省、令和7年度からの8,300円助成の終了方針。
【この開示請求】
- 令和7年11月21日 筆者、健発0629第26号(管理運営要領)の全ページ開示を請求(e-Gov 電子申請)。〔mhlw-vaccine-2025/request-kikin〕
- 令和7年12月11日 開第1631号:全部開示の決定。〔mhlw-vaccine-2025/decision-1631〕
- 令和8年3月26日 厚労省、決定通知書を送付。実施方法等申出書の提出を依頼。〔mhlw-vaccine-2025/notice-send-mail〕
- 令和8年4月20日・21日 オンラインで開示実施(厚労省の令和8年7月3日回答による)。
- 令和8年7月4日 筆者、ダウンロード・展開し要領の全12ページを取得。〔mhlw-vaccine-2025/disclosed-kikin〕
記録された事実
1. 要領は、この基金を何に使うと定めていたか〔mhlw-vaccine-2025/disclosed-kikin〕
健発0629第26号(令和2年6月29日・厚生労働省健康局長・公印省略)。宛先は「一般社団法人新薬・未承認薬等研究開発支援センター 専務理事 深野寛司 殿」。本文は3行です。
標記の事業について、「ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領」を別添のとおり定めたので、通知します。 貴職におかれましては、本要領の趣旨を御理解の上、本事業が円滑に実施されるよう御配慮をお願いします。
証拠を見る(行政文書)健発0629第26号「ワクチン生産体制等緊急整備基金事業等の実施について」1ページ目(令和2年6月29日・厚生労働省健康局長)

以下、別添の要領から、資金の使途を規律する条項を原本の記載どおり引きます(引用はPDFのテキストから取得したもので、筆者による要約ではありません)。
第1 通則
新型コロナウイルスワクチン等生産体制整備臨時特例交付金により造成された基金(以下「基金」という。)の管理、運用、取崩し等に係る事業(以下「基金事業」という。)及び基金を活用して行われる特別対策事業(以下「特別対策事業」という。)については、この要領の定めるところによるものとする。
第2(3)ア(事業実施団体の定義)
ア 特別対策事業のうち別添の1に定めるワクチン生産体制等緊急整事業を行う民間団体(以下「事業実施団体」という。)は、令和4年度末までの特別対策事業(ワクチン生産体制等緊急整事業に限る。)に係る計画を策定し、基金管理団体に提出するものとする。
〔注〕「緊急整事業」は原文ママです。「整備」の「備」が2箇所とも欠落しています。誤字と思われますが、本稿は開示された行政文書を逐語で引用する方針のため、そのまま記します。
第3(2)(実施主体)
特別対策事業の実施主体は、基金管理団体及び事業実施団体とする。
第2(8)(基金の処分の制限)
基金((6)により繰り入れられた運用益を含む。)は、特別対策事業を実施する場合を除き、これを取り崩してはならないものとする。
第2(9)①(事業の終了)
① 基金事業及び特別対策事業の実施期限は、令和4年度末までとし、その時点で基金を解散することとする。 ただし、令和4年度末における特別対策事業実施分の精算を目的として、必要に応じ、令和5年12月末まで基金事業を延長することができる。(この場合は、精算手続きが全て完了したうえで基金の解散を行うものとする。)
証拠を見る(行政文書)ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領 3ページ目(健発0629第26号 別添)

第2(9)②(残余額の国庫返還)
② 基金を解散する場合には、解散するときまでの基金の保有額、基金事業に係る保管の状況等必要な事項を厚生労働大臣に別紙様式により報告し、その指示を受け、解散するときに有する基金の残余額を国庫に返還しなければならない。
第2(11)(基本的事項の公表)
基金管理団体は、基金を造成した日の翌日から起算して 45 日以内に別紙様式2を作成し、自らのホームページにおいて公表しなければならない。
第6(2)(区分を超える経費配分変更の禁止)
(2)基金管理団体は、令和2年6月 29 日厚生労働事務次官通知「令和2年度新型コロナウイルスワクチン等生産体制整備臨時特例交付金交付要綱」(以下「交付要綱」という。)に基づき決定された交付要綱4の表の第1欄に定める区分ごとの交付額については、特別対策事業を実施するにあたり、この区分を超えて経費の配分の変更をしてはならない。
第6(3)(執行状況の公表)
(3)基金管理団体は、毎年度上半期及び下半期並びに決算終了時に、別に定めるところにより、基金執行状況報告書(ワクチン生産体制等緊急整備事業分)を厚生労働大臣に提出するとともに公表しなければならない。
別添1「ワクチン生産体制等緊急整備事業」(1) 事業の目的
新型コロナウイルス等の感染症の流行阻止・重症化予防に必要なワクチンを可能な限り迅速に製造し、日本国民のために確保するため、ワクチンを含むバイオ医薬品の生産体制を整備する。
別添1(2)② 事業の実施主体
事業実施団体
別添1(4) 対象経費
① 開発ワクチンの実生産及び保管に必要となる施設の新設、増設、改築又は改修のために必要な工事費又は工事請負費及び工事事務費…であって、土地取得に係る費用を除いた経費 ② 開発ワクチンの実生産及び保管に必要となる設備の新設又は増設に必要な消耗品費、備品購入費(導入費用を含む)及び工事請負費並びに委託料(建物の内部改装等に必要な経費を含む。) ③ 開発ワクチンの実生産方法の検討(保管方法の検討を含む。)に必要な試し製造、バリデーション、製造データ取得並びに品質評価に係る経費(ただし、人件費を除く。) ④ 他社(関連会社、共同研究実施者等を除く。)で開発された新型コロナウイルスワクチンを国内供給用に製造し、国内で製造販売承認取得を計画する場合に限り、技術移管に必要な経費… ⑤ その他、別の定めにより設置される評価委員会の意見に基づき、厚生労働大臣が必要と認めた事業に要する経費
※ 開発ワクチンの実生産及び保管に必要となる施設・設備の維持等に係る費用、消耗品費、原材料費及び人件費は対象経費とならない。
別添1(5) その他
少なくとも令和 11 年度末までの間、国内に影響を及ぼすような感染症の発生・流行時に必要なワクチンや医薬品を製造できる体制を確保し、国の求めに応じて活用する計画を策定すること。
証拠を見る(行政文書)ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領 10ページ目(健発0629第26号 別添)

この2つを併せて読むと、この基金の設計が分かります。公費で建て、設備を入れ、技術を移す。そこまでが基金の役目。建てた後の維持は民間団体が自前で、令和11年度末まで。基金自体は令和4年度末に解散し、残りは国庫へ返す。
そして、この要領の全文を通じて、「市町村」「地方公共団体」「接種」の語は現れません。
「確保」の語は、別添1(1)の目的に「迅速に製造し、日本国民のために確保するため」の形で現れますが、これは製造の目的を述べた文です。
1-2. ただし、私が自分に不利な条項を隠さずに書いておきます
ここで、私の見立てにとって不利な条項を、先に自分から挙げておきます。これを伏せて書けば、あとで必ず突かれます。
第一に、別添1(4)の⑤です。
⑤ その他、別の定めにより設置される評価委員会の意見に基づき、厚生労働大臣が必要と認めた事業に要する経費
この⑤があるため、別添1(4)は「限定列挙」ではありません。 ①〜④とは性質の違う受け皿の条項が末尾に置かれていて、対象経費の外側の線を厚生労働大臣の認定に委ねています。しかも⑤は「①〜④と同じ種類の経費」ではなく「必要と認めた事業に要する経費」と書かれています。事業そのものを大臣が認定できる、と読めます。
私は当初、この⑤を軽く見ていました。訂正します。「対象経費に接種は書いていない」という私の指摘は、⑤の存在を踏まえれば、それだけでは決め手になりません。
第二に、※印の除外リストです。
※ 施設・設備の維持等に係る費用、消耗品費、原材料費及び人件費は対象経費とならない。
正直に言えば——接種1回8,300円の助成は、この4つのどれにも当たりません。維持費でも、消耗品費でも、原材料費でも、人件費でもない。ですから、※印を根拠に「8,300円助成は対象外だ」と言うことは、できません。
(ただし、この※印は別の場面で効いてきます。後述の§5をご覧ください。)
第三に、第6(1)です。
(1)基金管理団体は、事業実施団体が行う特別対策事業に係る助成金の交付申請及び交付決定の事務に係る手続き等の交付要綱を定め、実施するものとする。
要領は、自分が完結した規範ではないと言っています。具体的な交付のルールは交付要綱で定めよ、と。ですから「要領に書いていないから駄目だ」という読み方は、要領自身の構造に反します。
——それでも、なお残る問いがあります。
⑤が受け皿だとしても、それは「評価委員会の意見に基づき」大臣が認める、という手続を条件にしています。8,300円助成について、その評価委員会は開かれたのでしょうか。 私は、その記録を確認できていません。
そして⑤があろうと第6(1)があろうと、第2(9)①の「令和4年度末までとし、その時点で基金を解散する」は動きません。⑤は対象経費の話であって、期限の話ではないからです。
2. 実際に何が行われたか(厚生労働省の公表資料)
厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課「新型コロナワクチンの定期接種等について」(令和6年6月21日・令和6年度第1回予防接種に関する自治体説明会資料)および「10月からの定期接種化等について」(令和6年9月24日・同第2回)に、次の記載があります。
■新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成事業実施要領 概要 「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成について」(令和6年5月16日付け感発0516第152号厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長通知)にて、都道府県等に対して、「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成事業実施要領」を示し…
1.目的 …これまでの特別な供給体制から定期接種への移行期における激変緩和措置として、自治体における新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成事業…を実施する。 2.対象者 本事業の助成対象は、予防接種法上の定期接種の実施主体である市町村(特別区を含む。)とする。 3.対象期間・対象経費 令和6年度に市町村が実施する新型コロナウイルスに係る定期の予防接種…について、予算の範囲内において、接種1回当たり8,300円(税込)を助成する。 4.留意事項(2)その他 ○支払決定・助成金の支払 支払決定及び助成金の支払は、ワクチン生産体制等緊急整備基金の基金管理団体が実施主体として行う。
同資料には「助成金支給事務手続きのフロー図」が掲げられています。「ワクチン生産体制等緊急整備基金」と明記された箱から、市町村へ助成金の矢印が伸びている図です。
証拠を見る(行政文書)助成金支給事務手続きのフロー図(厚生労働省 自治体説明会資料に基づく再作図)

同資料は8,300円の算出根拠も示しています。ワクチン代を3,260円から11,600円程度に見直した結果、接種費用が15,300円程度となり、自己負担7,000円を維持するための差額が8,300円である、と。
3. 令和3年度、この基金の9割はワクチンの購入に使われていた
参議院厚生労働委員会(令和5年6月1日)における高木真理議員の指摘(会議録より):
ワクチン生産体制等緊急整備基金、これ令和三年度では七千三百五十一億四千三百万円支出されております。…こういう名前なので、全部ワクチン生産…に使われているのかなと思ったら、実は、一部に名前に偽りありで、ファイザー、モデルナ、武田の三社から製品としてのワクチンを買うために六千六百二十六億二千八百万円使われていたということで、国内生産のために使われたのは七百二十五億千五百万円ということでありました。
会計検査院「新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種事業の実施状況等について」(令和5年3月・随時報告):
厚生労働省は、ワクチン製造販売業者との契約内容を踏まえて、基金管理団体に特例交付金を交付して団体基金に資金を積み立てた上で、基金管理団体がワクチン製造販売業者からの請求に基づき所要額を団体基金から取り崩した上で助成金を交付する枠組みとしていた。 4年3月末までにワクチンの確保に係る費用として基金管理団体からワクチン製造販売業者に対して交付された助成金の額は、合計で1兆4578億1837万余円となっていた。 今後、緊急に物資の確保が必要となり、当該物資の確保に係る枠組みを立案する際は、上記の枠組み以外に方法がないのかなどについて十分に検討した上で意思決定を行うことが求められる。
4. 国会で問われ、答えは出ていない
衆議院財務金融委員会(令和7年2月28日) 川内博史議員(会議録より):
これは、予算の目は、新型コロナウイルスワクチン等生産体制緊急整備臨時特例交付金なんです、目は。…等は生産体制の前についているんですよね。…ところが、その予算が通った後、厚労省に行くと、ワクチン生産体制等、生産体制の後ろに等を持ってきて、何にでも使えるように変えたんですよ、厚労省が。…等の位置をつけ替えて、何にでも使えるようにしますよ、地方にもお金を流しますよ、製薬会社にお金を上げますよというこのビジネスモデルは、絶対許しちゃ駄目だ。
公衆衛生のためだったら何でも使えますという基金になっちゃうんです。ということなので、そこはちょっと一回検証してみてくださいということをお願いしているんです。
加藤勝信 財務大臣の答弁(同):
予算の目が途中で変わるとなるとこれは大変な問題だと思いますが、…目と基金の名前自体がイコールじゃなきゃいけないということは多分ないんだろうと思いますので、ただ、ちょっと私もそれ以上、事実関係は分かりませんので、まずはその事実関係を確認させていただきたいと思います。
原口一博議員(同日):
接種という言葉はないんですよ、それから地方という言葉もないんです、目的のところで聞いているんですよ。これは、ワクチン、あくまで生産体制なんです。
政府の説明は、二つの省で異なっています。
財務省(横山信一 財務副大臣・令和6年12月19日 参院財政金融委/東国幹 財務大臣政務官・令和7年2月27日 衆院予算委第五分科会、ほぼ同文):
当該事業は、国内外のワクチンの確保及び安定的な国内供給に向けた環境整備事業として、ワクチンの確保及び供給の準備を行うという基金の目的の範囲内であるという判断がなされて実施されたものと承知しており、財務省としても、基金実施事業の目的外使用には当たらないという考えを持っております。
厚生労働省(仁木博文 厚生労働副大臣・令和7年2月28日):
新型コロナワクチン定期接種の自治体助成事業は、国民の保健衛生の向上に寄与するという基金の要綱等の事業目的の範囲内で実施しているものと理解しております。
財務省が援用している「ワクチンの確保及び供給の準備」という文言は、健発0629第26号の管理運営要領には存在しません。 これは令和2年12月の「ワクチン生産体制等緊急整備事業(非公募型)実施要領」の第1(目的)にある文言です。同要領はこう定めています。
本事業は、海外ワクチンの確保及び安定的な国内供給に向けた環境整備事業(以下「環境整備事業」という。)として、海外で製造される等の理由のため国内の生産体制の整備費用は必要でないものの、ワクチンの国内供給・流通における特別な準備が必要とされるワクチンについて、ワクチンの確保及び供給の準備を行うことを目的とする。
筆者は、この記事の執筆時点において、健発0629第26号の管理運営要領の一部改正通知を確認できていません。 厚生労働省のウェブサイト、法令等データベース、一般の検索のいずれでも発見できませんでした。ただしこれは「改正が存在しない」ことの証明ではありません。確認するため、改めて開示請求を行う予定です(後述)。
加藤財務大臣が令和7年2月28日に約束した「事実関係の確認」の結果が公表されたことも、筆者は確認できていません。
5. 要領が定めた解散期限は、守られていない
要領 第2(9)① は「実施期限は令和4年度末とし、その時点で基金を解散する」と定めています。しかし基金は令和4年度末に解散していません。
加藤勝信 財務大臣(令和7年2月17日・2月28日 衆院予算委):
ワクチン生産体制等緊急整備基金については、令和八年度末を期限とした基金であって、引き続き、新型コロナワクチンの研究開発、実生産を行う施設の整備、生産体制の維持等に係る経費に対する支援、定期接種に係るワクチン助成等を実施する、そうした観点から、必要な額として計上させていただいている
令和4年度末が、いつ、どの文書によって令和8年度末になったのか。 筆者はその文書を確認できていません。
もう一点、この答弁には見過ごせない語が入っています。
財務大臣は、基金が引き続き行う支援として「生産体制の維持等に係る経費に対する支援」を挙げています。しかし要領 別添1(4)※ は、こう定めています。
※ 開発ワクチンの実生産及び保管に必要となる施設・設備の維持等に係る費用、消耗品費、原材料費及び人件費は対象経費とならない。
要領が名指しで対象外にした「維持等に係る費用」を、財務大臣は基金の使途として説明しています。
しかも要領 別添1(5)は、事業実施団体に「少なくとも令和11年度末までの間」体制を確保せよと求めていました。維持費は出さないが、10年維持しろ——それがこの基金の設計でした。その維持費を、いま基金が見ているのだとすれば、それはいつ、どの文書で変わったのでしょうか。
これも、私が確認できていない点です。
6. 基金からの国庫返納
- 令和5年度:約1,008億円。柴田智樹 内閣官房行政改革推進本部事務局次長(令和6年5月8日 参院決算委)「令和五年度の国庫返納予定額のうち…厚生労働省所管のワクチン生産体制等緊急整備基金による返納額が約一千八億円ございます。これが重立ったもの」。
- 令和7年度:447億円。予算修正の財源とされました。大西健介議員(令和7年3月4日 衆院予算委)「ワクチン生産体制等緊急整備基金から四百四十七億円を使うことになっている」。
この447億円について、加藤財務大臣は令和7年2月28日にこう答弁しています。
令和六年度新型コロナウイルスワクチン定期接種に係る自治体助成事業について、国会における審議において事業の執行状況を踏まえ国庫返納すべきではないかという議論が行われたことを踏まえ、与党と予算修正の議論を行う中で…最大限の精査が行われた…予算編成時においては…インフルエンザの数字を使っていたわけでありますが…実際の接種状況等々が出てきた
つまり、8,300円助成の未執行分が国庫に返されたのは、住民や自治体の指摘によってではなく、国会審議によってでした。
7. 青森市に流れた額
参考として、青森市の数字を記録します。いずれも青森地方裁判所 令和7年(行ウ)第3号事件に提出された書証によります。
項目 | 人数 | 単価 | 金額 |
事業計画書の見込接種者数(令和6年9月報告) | 49,371人 | 8,300円 | 409,779,300円 |
1回目送金(見込額の1/4・令和6年10月) | — | — | 102,444,825円 |
事業実績報告書の実績接種者数 | 19,241人 | 8,300円 | 159,700,300円 |
2回目送金(実績−1回目・令和7年) | — | — | 57,255,475円 |
見込と実績の差 | 30,130人 | 8,300円 | 250,079,000円 |
実績は見込みの約39%でした。 実際に青森市に交付されたのは159,700,300円です。差額250,079,000円は交付されていません(接種を受けた人が見込みより30,130人少なかったことによります)。
厚生労働省は令和6年6月21日の説明会資料で、見込数の算出方法を「令和5年秋開始接種における65歳以上の接種率、接種者数を参考に、市区町村において令和6年度定期接種の接種者数を推計」と指示していました。青森市がどのような推計で49,371人という数字を出したのかは、筆者は確認できていません。
8. なぜ「雑入」だったのか — 予防接種法を読んで、分かったこと
私が最初に引っかかったのは、ここでした。
青森市は、この助成金を「諸収入・雑入」に計上しました。「国庫支出金」ではなく。国の金なのに、なぜ雑入なのか。私はこれを「隠すためだ」と考えました。
被告(青森市)は、雑入計上の事実を認めています。 答弁書(令和8年4月10日)。
同第2文のうち「諸収入・雑入」として計上されていたこと及び「国庫支出金」としては計上されていなかったことは認める。
そして、理由をこう述べています。
そもそも、国庫支出金は、国の歳出予算支出手続により直接国庫から当該自治体に交付される歳入であるのに対し、本件助成金はこれと異なり、国が基金管理団体から送付させる仕組みとし、予算科目についても「雑収入」等を例示して許容していることから、被告青森市はこの国の指示どおり「雑入」科目に予算計上したものである。
被告が乙第7号証として提出したのは、厚生労働省から青森県を経由して青森市へ送られたメール(令和6年5月20日付)です。被告証拠説明書に記された立証趣旨は、次のとおりです。
本助成金の支払いは、国から補助金等として交付するものでないため、予算科目については「雑収入」や「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金」等、各自治体において適切に設定するよう伝達されたこと
「国から補助金等として交付するものでない」。
私は、この点について負けます。雑入は、おそらく正しい。 PDSCは一般社団法人であって、国ではありません。国庫支出金とは「国の歳出予算支出手続により直接国庫から交付される歳入」です。PDSCから来た金を、国庫支出金の科目に入れることはできません。
——ですが、疑問は消えるのではなく、形を変えました。
なぜ、国から直接交付できなかったのでしょうか。
予防接種法を、条文で確認しました。
第5条第1項(市町村長が行う予防接種)
市町村長は、A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて、当該市町村の区域内に居住する者であつて政令で定めるものに対し…予防接種を行わなければならない。
第49条第1項(予防接種等に要する費用の支弁)
この法律の定めるところにより予防接種を行うために要する費用は、定期の予防接種については市町村、臨時の予防接種については都道府県又は市町村の支弁とする。
第50条(都道府県の負担)/第51条(国庫の負担)——この2条が引いているのは、すべて「第6条」、つまり臨時の予防接種です。
定期の予防接種(第5条)は、一度も引かれていません。
B類疾病の定期接種に、国庫負担は存在しません。都道府県負担も存在しません。 法律上は「市町村の支弁」+「実費徴収」(第52条)だけで完結しています。
(3割程度と言われる地方交付税措置は、予防接種法の外側の話です。地方交付税法に基づく基準財政需要額の算定であって、予防接種法に交付税の規定は一つもありません。厚生労働省の審議会資料には「B類疾病:3割程度を地方交付税で手当」と明記されています。)
だから、国は直接交付できなかったのです。
令和6年4月1日、新型コロナワクチンはB類疾病の定期接種になりました。その瞬間、費用は市町村の支弁になった。国が金を出す法律上の道が、閉じた。
そして——国から交付しないなら、国庫支出金にはならない。国庫支出金にならないなら、雑入になる。雑入とは、他のどの科目にも当てはまらない収入を入れる箱です。
「雑入」は、隠蔽ではありませんでした。 この金が国庫支出金の定義に当てはまらない形で設計されたことを、会計が正直に記録した結果です。
私が最初に見た「雑入」は、隠すための細工ではなく、スキームが会計に残した痕跡でした。
全国の自治体を調べました
私は、8,300円助成を受けた自治体の予算書・決算書を、ウェブ上で集められる範囲で調べました。確認できた47〜48自治体は、例外なく「雑入」または「諸収入」でした。
基金の名前まで書いていたのは、木津川市・亀山市・二戸市・四日市市・下関市の5市だけ。しかしその5市も、科目は雑入です。
違うのは名称であって、科目ではありません。雑入は全国共通で、例外がない。
この事実は、「青森市が隠した」という私の見立てを弱めます。そして同時に、「制度がそう作られている」という見方を強めます。
そして、ここでも私は一つ間違えていました
私は「青森市が基金名を偽装した」と主張してきました。決算附属書を読み直します。実際の印字はこうです。
第22款 諸収入 / 6 雑入 / 5 雑入 / 新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金 159,700,300
この「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金」は、厚生労働省が感発0516第152号で用いている事業の正式名称です。 そして、乙7で厚労省自身が例示した名称でもあります。
青森市は、国の言うとおりの名を使っています。「偽装」ではありません。(6月補正予算の段階では「新型コロナワクチン接種助成金」という、より短い名でした。名が変わっているのは事実ですが、決算時の名のほうが正式名称に近い。私は逆に理解していました。)
それでも、一つだけ、消えない引っかかりがあります。
5つの市は、基金名を書けたのです。書けたのに、厚生労働省が例示した2つの名——「雑収入」と「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金」——には、どちらにも「基金」の語がありません。
書いてはいけない、とは書かれていません。ただ、例示されなかった。
それだけのことかもしれません。私は、ここにそれ以上の意味を読み込むだけの資料を持っていません。乙第7号証の現物を、私はまだ見ていないからです。(私が読んだのは、被告答弁書と証拠説明書に引用された文言だけです。)
9. 14年前、厚生労働省は同じ事業をどうやっていたか
§8を書いていて、当然の疑問が出ました。基金から市町村へ助成するなら、都道府県に基金を置く方法もあったのではないか。
ありました。しかも、厚生労働省が14年前に、ほぼ同じ事業でやっています。
子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業(平成22年度・23年度補正予算)。厚生労働省「全国都道府県担当者会議」資料(平成22年12月9日)から、原文です。
○ 基金の設置 : 基金は、都道府県に設置し、市町村の事業に対し助成する ○ 負担割合 : 国1/2、市町村1/2(都道府県事務費1/2は都道府県負担) ○ 基金の期間 : 平成22年11月26日(補正予算成立日)~平成23年度末まで
国 →(交付金)→ 都道府県【基金】→(助成)→ 市町村 →(委託)→ 医療機関。
8,300円助成と、構造がそっくりです。ワクチン接種の費用を、国が基金を介して市町村に助成する。違うのは、基金を置いた場所だけ。
そして、ここが決定的です。同じ会議の資料(資料4-1)に、こうあります。
基金は、都道府県が次の事項を条例等において規定し、設置する。 ①基金の設置目的、②基金の額、③基金の管理、④運用益の処理、⑤基金の処分
厚生労働省は、条例の参考例まで配っていました。「○○(都道府)県ワクチン接種緊急促進基金条例【参考例】」。その第六条。
(処分)第六条 基金は、市区町村が行う子宮頸がん等のワクチン接種に係る助成事業の財源に充てる限り、平成○○年○○月○○日までの間、これを処分することができる。
条例です。
条例ということは、議会の議決を経ます。使途が条例に明記され、住民が条例で読めます。そして——地方自治法の統制が、丸ごと効きます。 監査委員も、住民監査請求も、住民訴訟も。
民間法人に置いた基金には、条例がありません。議会もありません。あるのは交付要綱と、法人の内部規程だけです。
制度は、この二つを最初から別のトラックとして設計しています。平成18年8月15日の閣議決定「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」は、対象を「基金法人」(独立行政法人・特殊法人・認可法人・共済組合を除く法人)とし、地方公共団体を明示的に除外しています。会計検査院も、公表様式を分けています——地方公共団体等は「地方公共団体等保有基金執行状況表」、法人等は「基金シート」。
同じ厚生労働省が、同じようなワクチン接種助成事業を、14年前は都道府県+条例でやり、令和6年は民間法人でやりました。
なぜでしょうか。
私は、その理由を書いた文書を、一つも見つけられていません。
(「民間法人の基金から市町村へ直接助成する」他の例も探しましたが、確認できた範囲では見つかりませんでした。ただしこれは「網羅的に調べて存在しないと確認した」のではなく、「探した範囲で見つからなかった」です。)
10. そもそも、これは「基金」でやってよい事業なのか
基金を使ってよい条件は、政令に書いてあります。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和30年政令第255号)第4条第2項。基金事業等の定義です。
複数年度にわたる事務又は事業であつて、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるもの
会計検査院(平成30年度決算検査報告)は、この条文について「これまで法令上明確でなかった基金事業の性質」を規定したものだと述べています。
「各年度の所要額をあらかじめ見込み難く」。
ここで、8,300円助成の支払いの仕組みを、もう一度見てください。
時期 | 手続 | 青森市の場合 |
令和6年9月13日まで | 各市町村が見込接種者数を報告 | 49,371人 |
令和6年10月 | 見込額の4分の1を前払い | 102,444,825円 |
令和7年7月14日まで | 実績を報告 | 19,241人 |
令和7年8月 | 実績で精算 | 57,255,475円 |
この事業は、所要額をあらかじめ見込むことを前提に組まれています。 見込めないどころか、見込ませて、その4分の1を先に払っている。
そして厚生労働省は、見込みの立て方まで指示していました。「令和5年秋開始接種における65歳以上の接種率、接種者数を参考に…推計」——過去の実績から推計できる、と国自身が言っています。
さらに、行政改革推進会議「基金の点検・見直しの横断的な方針について」(令和5年12月20日)の項目1。
1 基金への新たな予算措置を検討する際には、各年度の所要額がおおむね予測可能なものについては、基金によらない通常の予算措置によるものとする。
そして財務大臣通知「基金造成費補助金等の活用に関する指針について」(平成26年10月・財計第2534号)は、基金事業に該当し得る3類型(①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業 ②資金の回収を見込んで貸付けなどを行う事業 ③実施が他の事業の進捗に依存するもの)を挙げたうえで、こう続けます。
他方、これら以外の事務又は事業については、基金造成費補助金等によることなく対応することが可能か不断に検討すべきである
単価が8,300円に固定され、対象者が高齢者人口から推計でき、実績で精算する事業は、「各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要」なものなのでしょうか。
そして、ここが大事なところです。要領は行政内部の通知にすぎませんが、施行令は政令です。 要領をどう書き換えても、政令の要件は動きません。
11. 「緊急」は、いつ終わったのか — 国自身の文書で
この基金の名は「ワクチン生産体制等緊急整備基金」です。そして基金という予算形式が許される条件は、§10のとおり、政令が「各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要」と定めています。緊急性と予測困難性が、この器の存在理由です。
令和2年6月の時点で緊急事態だったことを、私は否定しません。 WHOは令和2年1月30日に緊急事態を宣言し、政府対策本部が置かれ、ワクチンは1本もありませんでした。基金が作られたこと自体を、私は責めていません。
問題は、その先です。
国が「緊急ではない」と書いた日
日付 | 出来事 |
令和5年4月27日 | 厚生労働大臣が感染症法44条の2第3項に基づき公表(5類移行の法的トリガー) |
令和5年5月5日 | WHO が緊急事態(PHEIC)を解除 |
令和5年5月7日 | 新型コロナが「新型インフルエンザ等感染症」でなくなる |
令和5年5月8日 | 5類へ移行(厚生労働省令第74号)。政府対策本部 廃止(特措法21条1項)。基本的対処方針 廃止 |
令和5年11月22日 | 厚生労働省 事務連絡:「まん延予防上緊急の必要があると認められる状況にはない」 |
令和6年3月31日 | 特例臨時接種 終了 |
令和6年4月1日 | 政令第116号 施行。新型コロナを予防接種法2条3項3号のB類疾病へ |
令和6年度 | 「緊急整備」基金から、市町村へ接種1回8,300円 |
令和5年11月22日の事務連絡から、原文を引きます。
1.特例臨時接種の終了について 令和6年度以降、新型コロナウイルス感染症の「まん延予防上緊急の必要がある」と認められる状況にはないと考えられるため、特例臨時接種を令和5年度末で終了することとする。
2.(1) 令和6年度以降の…接種については、個人の重症化予防により重症者を減らすことを目的とし、新型コロナウイルス感染症を予防接種法のB類疾病に位置づけた上で、同法に基づく定期接種として実施することとする。
これを書いたのは、厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課です。 8,300円助成の根拠となった感発0516第152号(令和6年5月16日)を出したのと、同じ部です。
条文の上で、新型コロナは肺炎球菌と同じ箱に入った
令和6年3月29日政令第116号(施行 令和6年4月1日)の新旧対照表です。
更新前 第二条 法第二条第三項第三号の政令で定める疾病は、肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る。)とする。 更新後 第二条 法第二条第三項第三号の政令で定める疾病は、肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る。)及び…新型コロナウイルス感染症とする。
予防接種法2条3項3号の条文は、こうです。
三 前二号に掲げる疾病のほか、個人の発病又はその重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資するため特に予防接種を行う必要があると認められる疾病として政令で定める疾病
新型コロナは、2号(新型インフルエンザ等感染症、指定感染症又は新感染症であって政令で定める疾病)には入れられませんでした。 令和5年5月7日に「新型インフルエンザ等感染症」でなくなっていたからです。
残ったのが3号でした。同居相手は、高齢者の肺炎球菌感染症です。
そして8条1項(勧奨)も9条1項(努力義務)も、条文の文言上「A類疾病に係るもの又は臨時の予防接種」にしかかかりません。B類には、勧奨も努力義務もありません。
厚生労働省自身の説明です。
A類疾病については「人から人への伝染」を防止する観点から努力義務や接種勧奨が課されており、B類疾病については「個人の発病又はその重症化防止」に力点が置かれていることから努力義務や接種勧奨は課されていない。
そして、青森市は、接種の4か月前に予算案を提案していた
ここが、この節でいちばん確かなところだと思います。
政令が言う基金の条件を、もう一度置きます。
複数年度にわたる事務又は事業であつて、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であること…
「あらかじめ見込み難く」。
では、実際はどうだったか。
日付 | 出来事 |
令和6年3月 | 厚生労働省が自治体向け説明会で、8,300円助成のスキームを提示 |
令和6年5月16日 | 感発0516第152号(8,300円助成の実施要領) |
令和6年5月20日 | 厚生労働省 → 青森県 → 青森市へメール(予算科目の扱い。乙7) |
令和6年5月 | 青森市企画部財政課が「令和6年度青森市補正予算案の概要(6月補正)」を作成 |
令和6年5月31日 | 議案第1号「令和6年度青森市一般会計補正予算(第1号)」を提案 |
令和6年6月 | 青森市議会 6月定例会で議決 |
令和6年9月13日まで | 各市町村が見込接種者数を厚生労働省へ報告 |
令和6年10月1日 | 接種開始 |
令和6年10月 | 見込額の4分の1を前払い |
令和7年8月 | 実績で精算 |
感発0516第152号が令和6年5月16日。青森市の提案が5月31日。その間、15日です。
補正予算案の原文から引きます(議案第1号「令和6年度青森市一般会計補正予算(第1号)」/作成 令和6年5月・青森市企画部財政課)。
歳出
新型コロナウイルスワクチン接種事業〔衛生費〕 659,227(89,498 → 748,725)
令和6年度から定期接種となった新型コロナウイルス感染症の予防接種について、個人の重症化予防により重症者を減らすための予防接種を実施するために要する経費 ・対象者:65歳以上の全ての方及び60歳から64歳で基礎疾患を有する方 ・接種期間:令和6年度 秋冬からの接種を予定 ・自己負担:3,000円(生活保護受給者及び非課税世帯は無料) ※国から示された標準的な接種費用(1回当たり7,000円)を、本市独自の軽減策によって、より安価に接種できるようにするもの
歳入
諸収入 409,779 新型コロナワクチン接種助成金 409,779
(単位:千円)
接種が始まる4か月前に、青森市は額を確定させ、議案として提案し、議会の議決を得ています。
議会が予算として議決できたということは、額が見込めていた、ということです。
それだけではありません。厚生労働省は、見込むことを市町村に義務づけていました。9月13日までに見込接種者数を報告せよ、と。そして見込みの立て方まで指示しています——「令和5年秋開始接種における65歳以上の接種率、接種者数を参考に…推計」。過去の実績から推計できる、と国が言っています。
そのうえで、見込額の4分の1を先に払っています。見込めなければ、前払いはできません。
単価8,300円は固定。対象は65歳以上等で、住民基本台帳から分かる。接種率は前年の実績から推計する。実績が出たら精算する。
これのどこが「あらかじめ見込み難い」のでしょうか。
全国の市町村が、議会に諮って、予算を組めたのです。
そして、この補正予算案には、もう一つ書いてあります。
令和6年度から定期接種となった新型コロナウイルス感染症の予防接種について、個人の重症化予防により重症者を減らすため
「定期接種となった」「個人の重症化予防」。 これは、厚生労働省が令和5年11月22日の事務連絡で「緊急の必要はない」としたときに使った言葉と、同じです。青森市の予算書にも、緊急という語はありません。
私は「だから違法だ」とは書きません。判断する立場にありません。ただ、この事実は記録しておきます。
議会で、市も国も「インフルエンザの数字を使った」と認めています
令和6年6月18日、青森市議会 予算特別委員会。 この補正予算を審査した場です。
藤田誠委員(立憲民主・社民)が、接種希望者が予算枠を超えたらどうするのかと尋ねました。青森市保健部長(千葉康伸)の答弁です。
新型コロナワクチンの接種人数の見込みにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、令和5年度の高齢者インフルエンザの予防接種の実績を参考として、予算編成はしておりますが、対象となる接種の希望者全員が接種できるように対応してまいります。
「令和5年度の高齢者インフルエンザの予防接種の実績を参考として、予算編成はしております」。
これが、49,371人という見込みの立て方です。前年のインフルエンザの実績から出した。
そして、国も同じことを言っています。
加藤勝信 財務大臣、令和7年2月28日 衆議院財務金融委員会。
予算編成時においては、これは令和六年の十月から定期接種に変わってきていますから、その実態がよく分からなかったということでインフルエンザの数字を使っていたわけでありますが…実際の接種状況等々が出てきた
国も、市も、前年のインフルエンザの実績から見込んでいました。両方が、自分でそう言っています。
政令は、基金をこう定めていました。
各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であること…
見込み難いのではありませんでした。前年のインフルエンザの実績を見て、見込んでいたのです。
「高齢者向けインフルエンザと同様とする」
同じ委員会で、千葉保健部長は、こうも答えています。
令和6年度の新型コロナワクチン接種につきましては、国において高齢者向けインフルエンザと同様とする方針が示されております。 このことから、昨年度までのように対象者全員に接種券を郵送するということではなく、接種を希望される方は、直接、実施医療機関で接種を受けていただくこととなります。
「高齢者向けインフルエンザと同様とする」。 国の方針です。
接種券の郵送も、やめました。
竹山美虎委員(市民クラブ)が、補正の中身をこう要約しています。
今回の補正、6億 5922 万 7000 円は、全額ワクチン接種に係るものと。今年度からは、重症者を減らすことを目的として、高齢者向けのインフルエンザと同様にすると。…接種費用1万 5300 円から、国の助成金 8300 円を引いて、1回当たり 7000 円の負担額になるけれども、市独自の軽減策 4000 円を引いて、実質の自己負担は 3000 円で接種できる
「緊急整備」基金から出る金の話を、議会は「高齢者向けのインフルエンザと同様」の話として審査していました。
そして周知については、こう答えています。
今後とも、青森市医師会をはじめとした関係機関と連携しながら周知を図ってまいります。
そして、最終の予算書から、名前が消えます
令和6年度の補正予算書を、議案別冊(=議案そのもの)で追いました。概要版ではありません。
令和6年度の最終補正は、二つあります。
議案別冊「令和6年度 青森市一般会計・特別会計補正予算」(令和7年第1回定例会・全242ページ) = 補正予算(第8号)。歳入の該当箇所です。
22 諸収入 4,102,485 △754,678 3,347,807 6 雑入 3,496,625 △756,399 2,740,226 5 雑入 3,362,973 △756,399 2,606,574
その説明欄に書かれているのは、2行だけです。
市有物件建物損害保険金 △584,295 雑入 △172,104
△584,295 + △172,104 = △756,399。内訳は、これで全部です。
議案別冊「令和6年度 青森市一般会計補正予算(令和7年第1回定例会その2)」(全14ページ) = 議案第90号 補正予算(第9号)。令和7年3月24日提出、青森市長 西秀記。令和6年度の、最後の予算です。
第1条 歳入歳出予算の総額に歳入歳出それぞれ 1,220,085千円を追加し、歳入歳出予算の総額を歳入歳出それぞれ 143,803,506千円とする。
中身は、これだけです。
12 委託料 1,220,085 ○除排雪対策事業 1,220,085
歳入は、市税(法人)に314,411千円、地方交付税(特別交付税)に905,674千円。そして——
22 諸収入 3,347,807 0 3,347,807
補正額 0。動かしていません。
この242ページと14ページ、あわせて256ページに、「ワクチン」も「コロナ」も、一度も出てきません。
4億円は、名前をつけて現れ、名前ごと見えなくなりました
時点 | 諸収入のワクチン助成金 |
当初予算(令和6年2月提案) | 無し |
6月補正・第1号(令和6年5月31日提案) | 「新型コロナワクチン接種助成金 409,779」(名前をつけて計上) |
3月補正・第8号(令和7年2月20日提案) | 雑入を△756,399。内訳は「市有物件建物損害保険金 △584,295」と「雑入 △172,104」の2行のみ。ワクチンの名前なし |
3月補正・第9号(令和7年3月24日提案・最終) | 補正額 0 |
決算 | 159,700,300円 |
409,779千円 − 159,700,300円 = 250,079千円。 この差は、△172,104千円 とは一致しません。
つまり、青森市はこの助成金の歳入予算を、一度も減額しませんでした。 409,779千円のまま年度末を迎え、決算で159,700,300円を計上しています。
私は、これを「隠した」とは書きません。 歳入予算は見込みであり、決算で実額を計上するのは通常の処理です。減額補正の義務があるわけでもありません。
ただ、事実として記録します。
6月に、名前をつけて4億円が現れました。その後、最終予算書からは、名前ごと見えなくなります。
予算書だけを読んでいる市民は、この4億円がどうなったのかを追えません。 決算を待つしかない。そして決算に載るのは、159,700,300円という別の数字です。
では、「緊急整備」した生産体制は、どうなったのか
これも記録しておきます。第1次公募(令和2年8月7日採択)で交付基準額が示された各社の、その後です。
企業 | 交付基準額 | 結果 |
アストラゼネカ | 162.3億円 | 契約1.2億回分に対し、国内配送 約20万回分(0.17%)。令和4年9月30日 供用終了 |
アンジェス | 93.8億円 | 令和4年9月7日 開発中止。約18.5億円を返還。厚生労働省の事後評価は「社会還元に至らなかった」 |
KMバイオロジクス | 285億円 | 承認申請にも至っていない |
塩野義製薬 | 476.9億円 | 令和6年6月24日 承認(コブゴーズ筋注)。同日「承認取得後の供給は予定しておりません」 |
武田薬品 | 301.4億円 | 契約1.5億回分に対し、納入 約824万回分(5.5%)。令和5年2月10日 政府が1.4億回分をキャンセル |
第一三共 | 603.0億円 | 起源株版(ダイチロナ)は令和5年8月2日 承認。同日「供給を予定しておりません」。JN.1版の納入 458,028回分 |
国産ワクチンの納入は、ダイチロナ 458,028回分+コスタイベ 139,072回分=約60万回分。2024/25シーズンの供給見込み約3,224万回分に対し、約2%です。
そして——令和6年6月18日、厚生労働省はこの基金の第5次公募を採択しています。 B類疾病になった2か月後に、「緊急整備」事業を。
会計検査院は、令和5年3月に何と書いたか
団体基金には…資金が実質的に積み立てられていなかった
8.82億回分の…算定根拠が十分に記載されておらず…適切とは認められない
今後、緊急に物資の確保が必要となり、当該物資の確保に係る枠組みを立案する際は、上記の枠組み以外に方法がないのかなどについて十分に検討した上で意思決定を行うことが求められる。
この節で私が言えること・言えないこと
言えること。
- 国は令和5年11月22日に、文書で「緊急の必要はない」と認定した。
- その後の令和6年度に、「緊急整備」基金から市町村へ支出が行われた。
- 基金という予算形式の政令上の要件は「所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要」である。
- 8,300円助成は、見込数を報告させ、その4分の1を前払いし、実績で精算する仕組みだった。
言えないこと。
- 「だから違法だ」とは書きません。 私は法律家ではありません。政令の要件を満たすかどうかを判断する立場にありません。
- 各社の生産施設が、いつ完成したのか(あるいは完成しなかったのか)を、私は確認できていません。 承認日と供給実績しか公表されていないためです。これは開示請求の対象になり得る空白だと考えています。
- 行政改革推進会議が令和6年4月22日に本基金を「今後、予算要求が見込まれないもの」に分類した事実はありますが、その分類は「緊急性が失われた」とは書いていません。「今後カネを要求する見込みがない」と「緊急性が失われた」は、同じではありません。緊急性についての直接の証拠は、令和5年11月22日の事務連絡です。
- 令和5年度の国庫返納 約1,008億円は、行政改革推進会議の資料では「返納予定額」です。実績の確認はできていません。
12. 青森市は、84日前に「考えておりません」と答えていた
ここまでは国の話でした。ここからは、青森市の話です。
令和6年2月26日、青森市議会に、二つの請願が出されました。
請願第2号「新型コロナワクチン接種における予防接種健康被害救済制度申請に係る専門の相談窓口創設とその周知を求める請願」 請願第3号「新型コロナワクチン接種における予防接種健康被害救済制度申請に係る費用の補助を求める請願」
請願の趣旨から引きます。
新型コロナワクチン接種の副反応による健康被害は、極めてまれだが、不可避的に生ずるものである。予防接種を受けた人に健康被害が生じた場合、給付が受けられる予防接種健康被害救済制度が設けられている。
この救済制度の申請手続は医療機関での診療記録や受診証明書をそろえる必要があることなどから非常に煩雑である。体調の優れない中で申請手続をすることは非常に困難であり、行政書士など専門家の手を借りることも費用の面からちゅうちょする状況が生じている。
請願第3号の請願事項は、こうです。
青森市において、新型コロナワクチン接種に関する予防接種健康被害救済制度の申請手続を行政書士など専門家へ委託した場合、申請が受理された際に、専門家への委託に係る費用を助成する制度を創設すること。
「申請が受理された際に」。認定されたときではなく、受理されたときです。
令和6年3月8日、午後0時45分から0時55分まで
危機管理対策特別委員会が、両請願を一括議題として審査しました。10分間です。
青森市保健部長(千葉康伸)の答弁を、会議録から引きます。
この新型コロナワクチン接種に係る健康被害救済制度の相談等につきましては、保健部感染症対策課が窓口となっていまして、医療職である保健師が現在の症状を確認の上、制度の概要及び申請方法などの説明を、相談者の体調に配慮しながら行っているところです。…こうしたことから、現時点では、新たに救済制度に関する専門の相談窓口を設置することは考えておりません。
次に、専門家への委託に係る費用を助成する制度につきましては、本市といたしましては、新型コロナワクチン接種による健康被害への対応、これは、国が認定する制度がありますので、統一的に対応されるべきという認識であります。国が認定する前の申請手続に係る、このような助成制度を創設することは考えておりません。
なお、この予防接種健康被害救済制度につきまして、本市への申請状況でありますが、これまで11件となっております。
11件。
質疑に立った委員は、1人だけでした。
やっぱり専門の窓口を、今、この救済制度だけの専門の窓口というのをつくるとなると、今度、子宮頸がんワクチンだったり、いろんなものの専門の窓口をつくらないとならなくなるので、専門の窓口というのをつくる必要性はないかな(軽米智雅子 委員)
採決の結果、両請願とも不採択。賛成1・反対4。
賛成した唯一の委員の意見は、全文これだけです。
市民にとって分かりやすい周知ということを、特に、いろいろ工夫していくということで求めているので、採択すべきと考えております。(万徳なお子 委員)
令和6年3月25日、本会議でも不採択(賛成10・反対20・欠席等1)。紹介議員は、本会議で賛成に回っています。
84日後
日付 | 出来事 |
令和6年2月26日 | 市民が救済制度の相談窓口創設・申請費用補助を請願 |
令和6年3月8日 | 危機管理対策特別委員会。10分の審査。保健部長「創設することは考えておりません」。不採択(賛成1・反対4) |
令和6年3月25日 | 本会議。不採択(賛成10・反対20) |
令和6年5月16日 | 厚生労働省 感発0516第152号(8,300円助成) |
令和6年5月31日 | 同じ市が、議案第1号で接種助成 409,779千円を提案 |
令和6年6月 | 同じ議会が、議決 |
3月8日から5月31日まで、84日です。
打たれて健康を失った人が「申請費用を助成してほしい」と求めた請願は、10分の審査で不採択になりました。
その84日後、同じ市が、打つための4億円を提案し、同じ議会が議決しました。
財源は、「ワクチン生産体制等緊急整備基金」です。
私が調べた限り、今も
- 専門の相談窓口は、設けられていません。 青森市の高齢者新型コロナウイルス感染症予防接種のページ(令和8年3月5日更新)の問合せ先は、請願審査のときと同じ「青森市保健所感染症対策課」のままです。
- 申請費用の補助制度は、見つかりませんでした。
- 救済制度の周知については、同ページに独立したセクションとアンカーリンクが設けられ、接種時期別(令和6年3月31日まで=A類水準/令和6年4月1日以降の定期接種=B類水準/令和6年4月1日以降の任意接種=予防接種法の対象外)に整理されています。ただし、これが請願を受けた措置だとは、どの資料にも書かれていません。 保健部長は請願審査の場で、公費負担終了に伴うリニューアルとして説明していました。
この節について
私は、請願が不採択だったこと自体を「違法だ」とは言いません。 請願を採択するかどうかは、議会の判断です。それが議会というものです。
ただ、二つの事実を並べて記録します。
一つ。青森市は令和6年3月8日、救済の申請費用について「創設することは考えておりません」と答え、議会は不採択にしました。
二つ。青森市は令和6年5月31日、接種への助成4億円を提案し、議会は議決しました。財源は「緊急整備」基金です。
そして、§9に書いたとおり——厚生労働省は8,300円助成を「国民の保健衛生の向上に寄与する」という基金の目的で説明しています。
その言葉は、救済には届かないのでしょうか。
表示についての注記:請願者の氏名は、青森市議会が公表している請願文書表に記載されたものです(住所は、こちらの判断で省いています)。紹介議員・委員・保健部長は、公職にある方として実名のまま記します。会議録・採決結果は、いずれも青森市議会が公表しているものです。
私の考え(推認)
ここからは、上の事実に対する私自身の見方です。事実と区別してお読みください。
〇 まず、なぜ私がこれをやっているのか。そして、私は勝つつもりがありません。
先に、はっきり書いておきます。私は、この訴訟に勝つつもりがありません。 最初からです。
私の目的の一番目は、青森市民と、日本国民に知ってもらうことです。訴訟は、そのための手段です。
なぜ訴訟なのか。訴えないと、文書が出てこないからです。
この記事に書いた数字を見てください。振込額決定通知書(乙11の1・2)も、厚生労働省が科目の扱いを伝えたメール(乙7)も、私が訴えたから、相手が出してきた文書です。訴えていなければ、今もどこにも存在しないことになっていた。訴訟は、そういう装置として機能しました。
そして——私はワクチンの被害者ですが、この件を医学の話として争っていません。
ワクチンが効くのか、安全なのか。その議論は専門家の間でも決着していません。私にその決着をつける力はありません。仮に一生かけても、私が医学論争に勝つことはないでしょう。
だから、行政手続きから迫ることにしました。
医学の当否がどうであれ、決めたルールを国が自分で守ったかどうかは、文書を読めば分かります。 金がどこから出て、どこへ行ったか。それを決めた文書はどれか。その文書は、正規の手続きで作られたか。
これは、私にもできる。市民にもできる。そして、これが守られていないなら——ワクチンの是非を論じる以前の問題です。
異常な数の健康被害が出ているワクチン行政に、くさびを打ち込みたい。 勝訴ではなく、記録を残し、知ってもらうこと。それが私の目的です。
そして、正直に書きます。その一番目の目的は、いま失敗しています。
私がこの件をXに書くと、アカウントが制限されます。届いていません。判決がどうなろうと、知られなければ意味がないのに、その肝心なところで、私は届けられていない。
だから、この記事を書いています。
一つ目。私は、自分の訴訟の立て方を一部誤っていました。
私は住民監査請求と住民訴訟で、「青森市が基金409,779千円を接種事業に流用した」と主張してきました。
この金額は、間違いでした。
409,779,300円は見込額(49,371人×8,300円)です。実際に交付されたのは159,700,300円(19,241人×8,300円)。差額の2.5億円は、消えたのではなく、最初から来ていなかった。接種を受けた人が見込みより30,130人少なかった、それだけの差です。
私が「説明されていない2.5億円」と書いたものは、掛け算1本で説明がつきます。訂正します。
そして、雑入の件(§8)。「青森市が隠した」というのも、違いました。 全国47〜48の自治体が、例外なく雑入に入れています。隠したのではなく、そこにしか入れる箱がなかった。 「基金名を偽装した」というのも、決算附属書に印字されているのは厚生労働省の正式事業名でした。
二つ目。それでも、私は記録しておきたいことがあります。
これは言い訳と読まれるかもしれません。それでも、事実として書いておきます。
私が409,779千円という数字を使ったのは、それが、市民が手にできる唯一の数字だったからです。
青森市の令和6年6月補正予算書には、「諸収入・雑入/新型コロナワクチン接種助成金/409,779千円」と書いてあります。それが公表資料でした。私が監査請求をした令和7年10月の時点で、公開されている文書から取れる数字は、それしかありませんでした。
振込額決定通知書(乙11の1・2)が出てきたのは、令和8年4月10日です。私が訴えを起こした後でした。あれが無ければ、私は今も409,779千円が交付されたと思っていたでしょう。
そして、この記事の中心にある管理運営要領。インターネット上のどこにも公開されていません。私が探した限り、一枚も。国会で議員がこの基金を追及したときも、要領の文面そのものは示されていません。私がこれを読めたのは、開示請求をして、200円払って、7か月待ったからです。
その要領の改正通知は、今も見つけられていません。厚生労働省の自治体向け通知のページは、令和6年3月31日で更新が止まっています。8,300円助成の根拠である感発0516第152号(令和6年5月16日)は、そこに載っていません。本体は、どこにも公開されていません。
加藤財務大臣は令和7年2月28日に「事実関係を確認させていただきたい」と答弁しました。その確認結果も、公表されていません。
——つまり、公開された文書だけを読んでいる市民が、この件について正確な理解にたどり着くことは、できません。
私は間違えました。それは事実です。しかし、正しい数字を知るには、訴訟を起こして、相手に証拠を出させるしかありませんでした。
これは私の落ち度の話であると同時に、この国の情報公開がどうなっているかの話でもあると、私は思っています。読む方は、そう思わないかもしれません。
三つ目。開示された文書を読んで、私は問いを絞りました。
私は、自分の主張を、国の側に立って潰してみました(その全記録は、姉妹サイトの調査ノートに書きました)。10の論点のうち、6つを外しました。
ここは、はっきり分けて書いておきます。
外した6つのうち、相手方(青森市)に指摘されたのは2つだけです。上に書いた金額と雑入。この2つは、被告が証拠を出してきて、初めて分かりました。
残る4つは、被告答弁書に一行も書かれていません。
- 要領は行政規則だから、違反=違法ではない(開示された1ページ目の形式を見れば分かる)
- 対象経費は限定列挙ではない。別添1(4)⑤という受け皿条項がある(開示された要領の本文にある)
- 「等」の位置は、財政法上の力を持ちにくい
- 「解散していないじゃないか」は、私の自白になる(後述・五つ目)
この4つは、誰にも言われていません。開示された文書と法令を、自分で読んで、自分で外しました。
負けたのではなく、絞ったのだと思っています。
そして、外していく過程で、こう見えました。
- 国が直接交付しない → 国庫支出金にならない → 雑入になる
- 民間法人を経由する → 市は間接補助事業者等にしかならない → 補助金適正化法の名宛人から外れる
- 市の行為は「受領」でしかない → 住民訴訟の財務会計行為に当たらない
金が民間法人を一度通ることで、法の網が、三重に、ずれます。
私が6つを外すことになったのは、私の論法が下手だったからだけではないと思います。このスキームが、法の網に掛からない形をしているからです。
これは私の見方です。事実ではありません。
そして、絞り込んだ結果、残った焦点は4つです。
焦点 | 決め手になる一次資料 | |
A | 「確保及び供給の準備」に、接種行為への助成は入るか | 非公募型実施要領(令和2年12月)/財務省・厚労省の答弁の食い違い(§4) |
B | この事業は、そもそも「基金」でやってよい事業か | 補助金適正化法施行令 第4条第2項(政令)(§10) |
C | 国庫負担の規定が無い領域に、通知一枚で金を入れられるか | 予防接種法 第49条・第50条・第51条(§8) |
D | なぜ、都道府県ではなく民間法人なのか | 平成22年 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業の資料(§9) |
この4つは、要領が改正されていても消えません。 政令と、法律と、14年前の厚生労働省自身の前例の話だからです。
四つ目。しかし、金額を間違えたことと、基金の使途が問われるべきかどうかは、別の問題です。
159,700,300円でも、1円でも、同じ問いが立ちます。ワクチンを作るための基金から、なぜワクチンを打つための金が出たのか。
私はこれを「違法だ」とは書きません。判断する材料が、まだ揃っていないからです。
五つ目。私の立論には、自分でも分かっている急所があります。先に書いておきます。
私はこの記事で「要領は令和4年度末に基金を解散せよと定めていた。しかし基金は解散していない」と書きました。
この指摘は、そのまま私に返ってきます。
基金が現に存在し、令和5年度に1,008億円を国庫返納し、令和8年度末まで続くのだとすれば——第2(9)①は、どこかの時点で改正されているはずです。 そして第2(9)①が改正されているなら、私が引用している令和2年6月29日の要領は、令和6年度の基金を規律する現行の規範ではないことになります。
現行でない文書を持ち出して「令和6年度の支出がこれに反する」と言うことは、できません。
つまり、私が「解散していないじゃないか」と言った瞬間に、私は「自分が引用している文書は古い」と認めていることになる。 これは私の立論の急所です。国側が代理人を立てて反論してきたら、まずここを突くでしょう。
だから、この記事は「違反している」という記事ではありません。「では、現行の規範は何なのか。それを見せてください」という記事です。
要領が正規に改正されていれば、話は終わります。改正通知が出てくれば、私は「手続きは踏まれていた」と書きます。そして、その可能性は十分にあります。 厚生労働省は令和2年12月、この基金の目的を「ワクチンの確保及び供給の準備」まで広げるとき、非公募型実施要領という正式な文書を作っています。広げるときに文書を作る役所なのです。8,300円のときも作った可能性は、決して低くありません。
しかし、もし改正されないまま、一枚の部長通知(感発0516第152号)だけで基金の使途が変わったのだとすれば——それは要領第2(8)「特別対策事業を実施する場合を除き、これを取り崩してはならない」と、どう両立するのでしょうか。
そのどちらなのかを確かめるために、私は次の開示請求をします。 私が求めているのは、告発ではなく、現行の規範の提示です。
そして——§9と§10は、要領が改正されていても、消えません。
「なぜ都道府県ではなく民間法人なのか」は、14年前の自分たちの前例の話です。「所要額をあらかじめ見込み難いのか」は、政令の話です。要領を書き換えても、政令の要件は動きません。
六つ目。私が最も引っかかっているのは、政府の説明が二つに割れていることです。
財務省は「ワクチンの確保及び供給の準備を行うという基金の目的の範囲内」と言います。しかしその文言は、基金の管理運営要領にはありません。令和2年12月の非公募型実施要領にある文言です。それは基金の目的ではなく、基金が行う一事業の目的です。
厚生労働省は「国民の保健衛生の向上に寄与するという基金の要綱等の事業目的の範囲内」と言います。原口議員が指摘したとおり、この理屈が通るなら、この基金は公衆衛生に関することなら何にでも使えることになります。1兆6,590億円が、そういう性質の金になります。
同じ支出について、二つの省が違う根拠を挙げている。私にはこれが、後から理由を探したように見えます。これは私の印象であって、事実ではありません。
七つ目。これは新しい話ではないのかもしれません。
平成21年、新型インフルエンザのとき、同じ名前の前身の交付金がありました。長妻昭 厚生労働大臣は、平成21年11月17日の衆議院本会議でこう答弁しています。
新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金約一千二百七十九億円のうち、約一千三十九億円を使用したところでございます。…なお、流用した経費一千三十九億円については、今後の事業に支障を来さないよう、平成二十二年度予算要求の事項要求を行っております。
「流用」。大臣自身がそう呼んでいます。生産体制整備の交付金を、ワクチンの購入に回した。構造は今回とほぼ同じです。
違うのは、当時は大臣が国会でそれを「流用」と述べ、翌年度の予算要求に反映させたことです。今回は「目的外使用には当たらない」とされています。
八つ目。最後に。
私は、この基金の問題を、ワクチンの是非の問題として書くつもりはありません。これは、決めたルールを国が自分で守ったかどうかの問題です。
ワクチンに賛成の人にも、反対の人にも、同じように関係があります。1兆6,590億円は、賛成した人の税金でも、反対した人の税金でも、等しく私たちの金だからです。
そして——要領は、基金管理団体に公表を義務づけていました。第2(11)は「基金を造成した日の翌日から起算して45日以内に別紙様式2を作成し、自らのホームページにおいて公表しなければならない」、第6(3)は「毎年度上半期及び下半期並びに決算終了時に…基金執行状況報告書を厚生労働大臣に提出するとともに公表しなければならない」。
要領は、私たちが見られるように、と書いていたのです。 その要領自体が、開示請求をしなければ読めなかった。国会で議論している議員も、その文面を示せていない。私が探した限り、要領本体はインターネット上のどこにもありません。
だから私は、これを出します。
九つ目。生産のための基金が接種に使えるなら、健康被害の救済に使えないはずがない。
ここまで書いてきて、私はずっと考えていたことがあります。
厚生労働省は、8,300円助成を「国民の保健衛生の向上に寄与するという基金の要綱等の事業目的の範囲内」と説明しました(仁木博文 厚生労働副大臣・令和7年2月28日)。
その理屈が通るのなら。
予防接種による健康被害の救済は、「国民の保健衛生の向上に寄与する」ことに当たらないのでしょうか。
私には、接種への助成よりも、被害の救済のほうが、その言葉に近いように思えます。少なくとも、遠くはない。
ワクチンを打つ金は基金から出た。打たれて健康を失った人に、基金は一円も出ていません。
私は、この基金が健康被害救済に使われた例を、一つも見つけられませんでした。
予防接種法を確認します。
第49条第2項
給付に要する費用は、市町村の支弁とする。
第50条第2項(都道府県の負担)/第51条第3項(国庫の負担)から計算すると、救済給付の費用負担は——国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1。A類・B類の区別はありません。
基金は、ここに登場しません。
1兆6,590億円を積み、そこから接種1回8,300円を全国の市町村に配ることはできた。同じ基金から、救済に回すことは、なぜできないのでしょうか。
私は「できるはずだ」と主張しているのではありません。「なぜできないのか、説明してください」と聞いています。
「国民の保健衛生の向上に寄与する」という説明を国が使う以上、その言葉が救済に及ばない理由を、私は聞く権利があると思っています。
十つ目。この秋、抗原量4倍のワクチンが、75歳以上の定期接種になります。
先に、私自身の誤りを訂正します。
私は当初、「今年の秋から、濃度約4倍のインフルエンザmRNAワクチンが定期接種になる」と理解していました。これは間違いでした。
調べたところ、インフルエンザのmRNAワクチンは、日本で一つも承認されていません。 国立医薬品食品衛生研究所が公表している「臨床開発中もしくは既承認のmRNA医薬」の一覧(令和8年7月6日更新)を確認しました。モデルナの mRNA-1010 は申請段階、ファイザーの BNT161 は第III相、自己増幅型(レプリコン)のインフルエンザワクチンに至っては第I相です。日本での承認も、申請も、ありません。
Meiji Seika ファルマのレプリコンワクチンは新型コロナのみ。第一三共の mRNA ワクチンも新型コロナのみです。
私は、二つの別の話を、一つに混ぜていました。訂正します。
——しかし、「抗原量4倍」と「この秋の定期接種」は、どちらも事実でした。
それは mRNAではなく、不活化ワクチンの話です。
エフルエルダ筋注(一般名:高用量インフルエンザHAワクチン/サノフィ)。令和6年12月に薬事承認。鶏卵で培養し、不活化したワクチンです。厚生労働省の資料から引きます。
高用量インフルエンザHAワクチンは、インフルエンザウイルスを発育鶏卵で培養・精製したのち不活化し、各株のHAが60μg含まれるよう調整した不活化ワクチンである。
標準量は15μgです。
高用量インフルエンザワクチンは、現状用いられている標準量インフルエンザワクチンの4倍の抗原を含み、より強い免疫応答を誘導するワクチンである。
抗原量4倍。これは事実です。(「濃度」ではなく「抗原量」が正確な言い方でした。ここも訂正します。)
そして、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の資料(第64回・令和8年2月12日)は、こう書いています。
使用するワクチンは、現行の標準量インフルエンザHAワクチン又は高用量インフルエンザHAワクチンのいずれかとする。
対象は75歳以上です(60歳以上75歳未満への接種は任意接種の扱い)。
※ 令和8年7月時点で、政省令はまだ公布されていません。3価製剤の用法・用量が確定した後に、あらためて諮問する方針とされています。「決定済み」ではありません。
私が引っかかっているのは、ここです
厚生労働省自身の資料が、副反応について、こう書いています。局所反応・筋肉痛・頭痛・発熱は、標準量より高頻度である、と(軽度〜中等度・一過性であり、重篤な有害事象の頻度は同等、とも書かれています)。
抗原量を4倍にすれば、副反応が増える。それは、国も分かっています。
そして——インフルエンザは、B類疾病です。
B類だと、健康被害の救済水準が、こうなります。
A類疾病 | B類疾病(インフルエンザ) | |
障害年金1級 | 5,481,600円/年 | 3,045,600円/年 |
死亡した場合 | 死亡一時金 48,000,000円 | 遺族一時金 7,992,000円/遺族年金 2,664,000円/年(10年限度) |
医療費 | 自己負担分 | A類に準ずるが、入院相当に限定 |
死亡した場合、A類の6分の1です。
平成13年の法改正で、二類(現在のB類)は「①個人予防目的に比重がある ②接種の義務が課されていない」ことを理由に、一般の医薬品副作用被害救済と同程度の水準とされました。これが今の枠組みです。
抗原量を4倍にして、副反応は増えると分かっていて、救済は死亡時で6分の1の枠に置く。
私は、これを「間違っている」と断定しません。制度としてそう設計されている、というだけかもしれません。
ただ、私は知りたい。そして、青森市民に知ってほしい。
だから、私は青森市と青森市医師会に聞きたい
- 青森市は、この秋、75歳以上の市民に、抗原量4倍のワクチンを推奨するのですか。
- 青森市医師会は、推奨するのですか。
- 標準量との違い——抗原量が4倍であること、副反応が標準量より高頻度と国の資料に書かれていること、B類なので救済水準がA類の6分の1であること——を、接種を受ける75歳以上の方に、説明するのですか。
- 費用はどうなるのですか。 インフルエンザの定期接種は、予防接種法第49条第1項により市町村の支弁です。国庫負担の規定はありません。地方交付税で3割程度が手当されるだけです。残りは、市の金と、被接種者の自己負担です。
- もし助成があるのなら、その資金源はどこですか。 また基金ですか。それとも別の金ですか。それを決めた文書は、どれですか。
私は、答えを持っていません。だから聞いています。
十一つ目。もしこの定期接種が止まったら。
これは私の希望であって、事実ではありません。そう読んでください。
私の訴訟は、一度の審理も経ずに判決を迎えようとしています。勝つつもりはありません。
ただ、もし——この記事を読んだ人が、自分の町の決算書を開き、雑入の欄を見て、「これは何の金だろう」と思ってくれたら。もし、75歳の親を持つ人が、「抗原量4倍って、どういうことだろう」と一度立ち止まってくれたら。
そのときに初めて、私の訴訟は意味を持つのだと思います。
判決ではなく、そこに。
読者へ問う — 私は次に何をすべきでしょうか
私の住民訴訟は、一度の審理も経ないまま判決を迎えようとしています。それはそれとして、私はこの調べを続けるつもりです。時間はかかっても構いません。
ただ、一人でできることには限りがあります。だから、青森市民のみなさん、そしてこれを読んでくださった方に、率直にうかがいます。
私が次にできること
A. 要領の改正通知を、厚生労働省に開示請求する。(最優先)
令和2年6月29日付け健発0629第26号「ワクチン生産体制等緊急整備基金事業等の実施について」及び別添「ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領」について、令和2年6月29日から現在までに行われた一部改正通知の全て(改正後全文・新旧対照表を含む)。改正が行われていない場合はその旨。
これで決着します。 改正があれば「手続きは踏まれていた」で終わり、私はそう書きます。無ければ、次の問いが立ちます。
B. 感発0516第152号の本体と、その決裁文書を開示請求する。
令和6年5月16日付け感発0516第152号「新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成について」の本体及び別添実施要領、並びに同通知の発出に係る決裁文書(基金の使途としての法令適合性の検討経過、及び予防接種法との関係の検討経過を含む)。
一枚の部長通知で基金の使途を広げるとき、省内でどんな検討がされたのか。予防接種法にB類定期接種への国庫負担の規定が無いことを、誰がどう整理したのか。
C. 財務省に、大臣が約束した「確認結果」を開示請求する。
令和7年2月28日 衆議院財務金融委員会において、財務大臣が「事実関係を確認させていただきたい」と答弁した、ワクチン生産体制等緊急整備基金に係る予算の目と基金の名称の関係についての確認結果を記録した文書。
確認したのか。したなら、結果は何か。
D. 実施期限を令和4年度末から令和8年度末に延ばした文書を開示請求する。
E. 乙第7号証の元になった、厚生労働省から都道府県への事務連絡を開示請求する。(新規・重要)
令和6年5月20日頃、厚生労働省が都道府県に対して発出した、新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金の予算科目の取扱いに関する事務連絡・メール等の一切(「雑収入」等の科目を例示したものを含む)。
被告が乙7として出したメールの現物です。私は、被告答弁書に引用された文言しか読んでいません。厚生労働省が、科目と名称を、どういう言葉で伝えたのか。全文を見たい。
F. 「なぜ都道府県ではなく民間法人か」を開示請求する。(新規)
新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成事業について、助成の実施主体をワクチン生産体制等緊急整備基金の基金管理団体としたことの検討経過を記録した文書(平成22年度子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業のように都道府県に基金を設置する方式を採らなかった理由に関するものを含む)。
14年前は都道府県+条例でできたことを、なぜ今回はしなかったのか。
G. 確認するだけ(請求不要)。 PDSCが要領第2(11)・第6(3)で公表を義務づけられている別紙様式2・基金執行状況報告書。四半期ごとの掲載を確認済みですが、中身をまだ読んでいません。
H. 青森市に、見込接種者数49,371人の算出根拠を開示請求する。
実績は19,241人=39%でした。加藤財務大臣は国の見込みについて「予算編成時においてはインフルエンザの数字を使っていた」と答弁しています。青森市の見込みは、どう立てられたのか。
I. 訴訟の準備書面で、立て直す。
金額を159,700,300円に改め、争点を「要領に反するか」から「予防接種法に国庫負担の規定が無い領域に、部長通知で基金から資金を入れられるか」「所要額を見込ませて前払いする事業が、政令の言う基金事業か」へ移す。
うかがいたいこと
- この中で、どれを優先すべきでしょうか。 私はAとEだと思っていますが、他の見方があれば教えてください。
- そもそも、これは続ける価値のある調べでしょうか。 私は「ある」と思っています。でも、私はワクチンの被害者です。自分の立場が判断を歪めていないか、私には分かりません。歪んでいると思われたら、そう言ってください。
- 私の見落としはありませんか。 特に、要領の改正通知を私が見つけられていないだけ、という可能性。もし公開されている場所をご存じなら、教えてください。その場合、私はこの記事を訂正します。
- なぜ、都道府県ではなく民間法人だったのか。 これが今の私の一番の疑問です。14年前は都道府県+条例でできたのに。理由をご存じの方、あるいは他に同じ形の例をご存じの方。
- あなたの町の決算書の「雑入」を見てください。 8,300円助成は全国の市町村に配られました。青森市だけの話ではありません。基金の名前が書いてありますか。それとも書いてありませんか。私が確認した47〜48自治体のうち、基金名を書いていたのは5つだけでした。
- 同じ請求を、あなたもしてみませんか。 開示請求は誰でもできます。手数料は1件200円です。私一人の請求より、複数の請求のほうが、記録として強く残ります。
情報提供は匿名で構いません(Signal またはメール/LINEは使いません)。
私は結論を持っていません。 要領にこう書いてある、実際にこうなっている、予防接種法にはこう書いてある、14年前はこうだった、国会でこう問われて答えが出ていない——ここまでが、私が示せることです。その先をどう見るかは、あなたが決めてください。
資料一覧
開示された行政文書(本稿の中心資料)
文書ID | 文書名 | 決定 | 黒塗り | 状態 |
mhlw-vaccine-2025/request-kikin | 行政文書開示請求書(健発0629第26号 基金運営要領 全ページ) | — | — | e-Gov/令和7年11月21日 |
mhlw-vaccine-2025/decision-1631 | 行政文書開示決定通知書 開第1631号 | 全部開示 | 無 | 令和7年12月11日 |
mhlw-vaccine-2025/disclosed-kikin | 健発0629第26号「ワクチン生産体制等緊急整備基金事業等の実施について」(別添:ワクチン生産体制等緊急整備基金管理運営要領・全12頁) | 開第1631号 | 無 | 令和8年7月4日 交付・全文取得 |
本稿の §1 は、すべて disclosed-kikin の本文からの引用です。行政による黒塗りは一箇所もありません。
引用の方法について:交付されたPDFにはテキスト情報が埋め込まれているため、本稿の引用はそのテキストをそのまま取り出したものです。画像から文字を読み取る処理(OCR)は用いていません。したがって、読み取り誤りによる字句の違いは生じていません。第2(3)アの「緊急整事業」(「備」の欠落)は、原本にそう記載されているものです。
画像について:本稿に掲げた要領の画像3点は、交付された原本PDFから該当ページをそのまま画像化したものです。1ページ目は無加工。3ページ目・10ページ目には筆者が黄色の強調を加えています(原本にはありません)。この文書には行政による黒塗りが存在しないため、画像中の隠された箇所はありません。フロー図は筆者による再作図です(原本図の複写ではありません)。
開示手続の経過(本稿では引用のみ)
文書ID | 文書名 | 日付 |
mhlw-vaccine-2025/notice-send-mail | メール「開示請求通知書の送付について」(7件の決定通知を送付) | 令和8年3月26日 |
mhlw-vaccine-2025/mail-1722-5-reply-0629 | 厚労省の返信(申出書の再送依頼) | 令和8年6月29日 |
筆者の厚生労働省に対する開示請求は本件を含め7件あり、うち本件を含む6件が令和8年4月20日・21日にオンラインで実施されました。残る1件(開電第1722号の5)は、実施方法等申出書をめぐるやり取りが続いています。この経過自体は別稿で報告します。
厚生労働省の公表資料
資料名 | 日付 | 本稿での用途 |
令和6年6月21日 | §2(実施要領概要 p.11/フロー図 p.15/8,300円の算出 p.14) | |
令和6年9月24日 | §2(実施要領概要 p.9/フロー図 p.13/支払スケジュール p.10) | |
令和2年12月 | §4(「確保及び供給の準備」の出所) | |
令和2年 | 経緯(交付対象=メーカー) | |
令和6年9月9日 | §8(B類は3割程度を地方交付税で手当) | |
平成22年12月9日 | §9(基金は都道府県に設置し、市町村の事業に助成する) | |
平成22年12月9日 | §9(基金は条例等で設置。条例参考例つき) |
法令
法令 | 本稿での用途 |
§8(定期接種=市町村の支弁。国庫・都道府県負担の規定は臨時接種にしか及ばない) | |
§10(基金事業の要件=「各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要」) | |
§8(補助金等・間接補助金等) |
⚠️ 予防接種法の条番号は、改正で移動しています。 費用の支弁が第49条、都道府県負担が第50条、国庫負担が第51条、実費徴収が第52条であることは、e-Gov の現行条文で確認しました。古い解説記事は「第25条が費用負担」と書いています。ご注意ください。
政府の公表資料
資料名 | 日付 | 本稿での用途 |
令和5年12月20日 | §10(項目1「各年度の所要額がおおむね予測可能なものについては、基金によらない通常の予算措置による」) | |
令和6年4月22日 | 経緯(予算措置額・国庫返納予定額・分類) | |
平成18年8月15日 | §9(対象は「基金法人」=地方公共団体を除外) | |
令和5年3月 | §3(1兆4,578億円の「確保に係る費用」) | |
— | §10(施行令4条2項は「これまで法令上明確でなかった基金事業の性質」を規定した/財務大臣指針 財計第2534号の3類型) |
国会会議録
会議 | 日付 | 発言者 | 本稿での用途 |
衆議院本会議 | 平成21年11月17日 | 長妻昭 厚生労働大臣 | §私の考え・七つ目(「流用した経費一千三十九億円」) |
参議院厚生労働委員会 | 令和5年6月1日 | 高木真理 議員 | §3(「名前に偽りあり」) |
参議院決算委員会 | 令和6年5月8日 | 柴田智樹 内閣官房行政改革推進本部事務局次長 | §6(1,008億円) |
参議院財政金融委員会 | 令和6年12月19日 | 横山信一 財務副大臣 | §4(財務省見解) |
衆議院予算委員会 | 令和7年2月13日 | 重徳和彦 議員 | 経緯(執行率) |
衆議院予算委員会 | 令和7年2月17日 | 石破茂 内閣総理大臣/加藤勝信 財務大臣 | §5(令和8年度末)・経緯(運用損19億円) |
衆議院予算委員会第五分科会 | 令和7年2月27日 | 東国幹 財務大臣政務官 | §4(財務省見解) |
衆議院財務金融委員会 | 令和7年2月28日 | 川内博史 議員/原口一博 議員/仁木博文 厚生労働副大臣/加藤勝信 財務大臣 | §4(「等」の位置・「接種という言葉はない」・「事実関係を確認させていただきたい」) |
衆議院予算委員会 | 令和7年3月4日 | 大西健介 議員 | §6(447億円) |
裁判資料(青森地方裁判所 令和7年(行ウ)第3号)
書証 | 内容 | 本稿での用途 |
乙7 | メール(令和6年5月20日・厚生労働省→青森県→青森市)「本助成金の支払いは、国から補助金等として交付するものでないため、予算科目については『雑収入』や『新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金』等、各自治体において適切に設定するよう伝達された」 | §8(筆者は現物未見。被告証拠説明書の立証趣旨による) |
乙8の1〜4 | 『九訂 地方公共団体 歳入歳出科目解説』(ぎょうせい)「国庫支出金は国の歳出予算の支出手続により直接国庫から当該地方公共団体に交付される歳入である」 | |
乙10の1 | 令和6年度 決算附属書(第22款 諸収入/6 雑入/5 雑入/新型コロナ定期接種ワクチン確保事業に対する助成金 159,700,300) | |
乙11の1 | 振込額決定通知書(令和6年10月分・102,444,825円) | |
乙11の2 | 振込額決定通知書(令和7年分・57,255,475円) | |
甲60 | 事業計画書(令和6年7月30日・409,779,300円) | |
甲66 | 感発0516第152号(※筆者は全文未読) | |
被告答弁書 | 令和8年4月10日 |
予防接種法・救済制度・高用量ワクチン(§私の考え 九つ目・十つ目)
資料 | 用途 |
九つ目(救済給付の費用=市町村の支弁。国1/2・都道府県1/4・市町村1/4。A類B類の区別なし) | |
九つ目・十つ目(A類/B類の給付水準の差/平成13年改正の経緯/臨時接種のコロナ救済は「国により全額補填」) | |
十つ目(「使用するワクチンは、現行の標準量インフルエンザHAワクチン又は高用量インフルエンザHAワクチンのいずれかとする」/高用量は75歳以上/HA 60μg・不活化) | |
十つ目(標準量15μg/高用量60μg=4倍。米国では2009年承認) | |
十つ目(インフルエンザmRNAワクチンは日本で未承認。mRNA-1010=申請段階/BNT161=第III相/レプリコン型=第I相) |
十つ目についての注記:筆者は当初「濃度約4倍のインフルエンザmRNAワクチンが今秋定期接種になる」と理解していましたが、これは誤りでした。「抗原量4倍」も「今秋の定期接種(予定)」も事実ですが、いずれもmRNAではなく不活化ワクチン(エフルエルダ/サノフィ)の話です。本文で訂正しています。また「濃度」ではなく「抗原量」が正確な表現です。
政省令は令和8年7月時点で未公布です。3価製剤の用法・用量が確定した後にあらためて諮問する方針とされており、「決定済み」ではありません。
「緊急」の終わりに関する資料(§11)
資料 | 用途 |
§11(「まん延予防上緊急の必要があると認められる状況にはない」) | |
§11(B類の定義/勧奨・努力義務はA類と臨時接種にしか及ばない) | |
§11(新型コロナを2条3項3号へ=高齢者の肺炎球菌感染症と同じ号) | |
§11(B類に努力義務・勧奨が課されない理由・p.12) | |
§11(5類移行の法的トリガー) | |
WHO「Statement on the fifteenth meeting of the IHR (2005) Emergency Committee」(2023年5月5日) | §11(PHEIC 解除) |
§11(各社の交付基準額) | |
§11(B類化の2か月後の採択) | |
§11(国内配送 約20万回分) | |
§11(承認と同日「供給を予定しておりません」) | |
§11(同上) | |
§11(1.4億回分のキャンセル) | |
§11(「資金が実質的に積み立てられていなかった」「算定根拠が十分に記載されておらず」) | |
§11(予算措置額・「①-2 今後、予算要求が見込まれないもの」・国庫返納予定額) | |
§11(歳出 新型コロナウイルスワクチン接種事業 659,227千円〔89,498→748,725〕/歳入 諸収入・新型コロナワクチン接種助成金 409,779千円/自己負担3,000円/接種期間 令和6年度秋冬から) |
§11 の注記:本節は「緊急性が失われた後に基金から支出された」という事実の並列であって、違法性の主張ではありません。また、令和2年6月の基金設置時に緊急事態であったことを否定するものでもありません。
塩野義製薬の販売名は「コブゴーズ筋注」です(「コセルゴ」はアストラゼネカの抗がん剤で無関係)。また5類移行の根拠は政令ではなく厚生労働省令第74号、特措法からの離脱は厚生労働大臣の公表(感染症法44条の2第3項)です。
青森市議会の請願と補正予算(§11・§12)
資料 | 用途 |
§12(請願第2号・第3号の全文。令和6年2月26日受理) | |
§12(保健部長「創設することは考えておりません」/申請11件/審査は午後0時45分〜0時55分) | |
§12(両請願とも不採択。賛成1・反対4) | |
§12(本会議で不採択 賛成10・反対20)/令和6年度一般会計予算は令和6年2月22日提案・3月25日議決 | |
§11(衛生費:新型コロナウイルスワクチン接種事業 R5 737百万円 → R6 89百万円。当初予算の歳入に「新型コロナワクチン接種助成金」は無い) | |
§12(問合せ先は現在も「青森市保健所感染症対策課」。専門窓口・申請費用補助は確認できず) | |
§11(保健部長「令和5年度の高齢者インフルエンザの予防接種の実績を参考として、予算編成はしております」/「国において高齢者向けインフルエンザと同様とする方針が示されております」/接種券の郵送取りやめ/6億5922万7000円は全額ワクチン接種/青森市医師会と連携)※青森地裁 令和7年(行ウ)第3号の書証 | |
議案別冊「令和6年度 青森市一般会計・特別会計補正予算」(令和7年第1回定例会・全242頁) | §11(令和6年度の最終補正予算書。「ワクチン」「コロナ」の語は1件も無い。22款諸収入 △754,678/6項雑入 △756,399/5目雑入 △756,399。説明欄は「市有物件建物損害保険金 △584,295」「雑入 △172,104」の2行のみ) |
筆者が確認できていないもの(記録として明示)
- 健発0629第26号の一部改正通知(存在の有無を含む)→ 開示請求予定(A)
- 感発0516第152号の本体(甲66として書証に提出済みだが、筆者は全文未読)→ 開示請求予定(B)
- 乙第7号証の現物(被告答弁書・証拠説明書に引用された文言しか読んでいない)→ 開示請求予定(E)
- 令和2年6月29日付 交付要綱(厚生労働事務次官通知)本体
- 加藤財務大臣が令和7年2月28日に約束した「事実関係の確認」の結果 → 開示請求予定(C)
- 実施期限を令和4年度末から令和8年度末に延長した文書 → 開示請求予定(D)
- 助成の実施主体を民間法人の基金管理団体とした理由を記録した文書 → 開示請求予定(F)
- PDSC が要領第2(11)により公表義務を負う「別紙様式2」(同第6(3)の基金執行状況報告は四半期ごとの掲載を確認したが、内容は未読)→ 確認予定(G)
- 8,300円助成が厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会に諮られたかどうか(自治体説明会での提示は確認したが、分科会での「基金を財源とすることの是非」の審議は見当たらない)
- 青森市の見込接種者数49,371人の算出根拠 → 開示請求予定(H)
- B類定期接種の地方交付税措置「3割程度」が、地方交付税法上どの単位費用でどう算定されるか(厚労省資料に「3割程度」の明記があることは確認)
- 行政改革推進会議の「3年ルール」が現在も生きているか(令和8年6月24日の経済財政諮問会議で見直し対象になったという報道があるが、一次資料に到達できていない)
- 「民間法人の基金から市町村へ直接助成する」他の例(探した範囲で見つからなかった。存在しないと確認したのではない)
- エフルエルダ(高用量インフルエンザHAワクチン)の定期接種に係る政省令(令和8年7月時点で未公布。3価製剤の用法用量確定後に再諮問の予定)
本稿は進行中の調べの記録です。上記が判明した時点で、要旨・私の考え・読者へ問うの各節を差し替え、事実の記録には1行を足します。とりわけ、要領の正規の改正通知が確認された場合、本稿の見立ては大きく変わります。 そのときは、そう書きます。